2010年3月16日火曜日

「戦争も、遂に、(一種の)“ドラッグだ!”」と認識される時代!映画『ハート・ロッカー』を観て思うこと。“ネタバレ注意”

先週、本年度のアカデミー賞が発表になりました。
これを受けて、『酒の肴』を急遽、創作しました。
今宵の『酒の肴』、スコッチに良く合います。では、ゆっくりとご堪能あれ!

今回は、ジェームスキャメロンの『アバター』か、キャスリン・ビグローの『ハート・ロッカー』か、と言われておりました。結果、『ハート・ロッカー』は、下記の6部門の栄誉に輝きました。

作品賞 ハート・ロッカー
監督賞 キャスリン・ビグロー(ハート・ロッカー)
脚本賞 ハート・ロッカー
音響編集賞 ハート・ロッカー
編集賞 ハート・ロッカー
録音賞 ハート・ロッカー

さて、本日の「酒の肴」は、この『ハート・ロッカー』を素材にして、「酒の肴」を創作しました。
まず、この作品、当初、「反戦メッセージ」の強い作品だと思っておりました。
が、しかし、「反戦」というよりも、「戦争はドラッグだ!」でした。
そして、「“戦争と言うドラッグ”に嵌った男達の姿」を描いた映画でありました。

『地上最大の作戦』から、『プラトゥーン』を経て、『ハート・ロッカー』・・・、確かに「戦争映画」の様相は進化しておりますね。唯、この作品、「新しい戦争映画」というより、「ドラッグに嵌った男達を描いた映画」でしたねぇ。

まず「戦争はドラッグだ!」というメッセージが画面にでます。
この作品は、まさに「戦争はドラッグだ!」ということを具体的に映像にするとこのような作品になる、ということをオーディエンスに示した作品です。
「ハート・ロッカー」とは、米軍の中では「棺桶」とか「行きたくない場所」という意味で使われている言葉だそうです。
ストーリーは、世界で最も危険な仕事の一つ、アメリカ軍の爆発物処理班(3人で1班構成)のある兵士を追った物語です。事実として、爆発物処理に携わる技術兵の死亡率は、他の兵士よりもはるかに多いとのことです。

舞台は、2004年夏のイラク・バグダッドです。
爆弾処理と言っても、不発弾や地雷除去などと異なり、一つ間違えば「ドカァ~ン」です。
しかも、場合によっては、起爆装置を手にした、テロリスト達が、爆弾処理活動現場の周りに徘徊しているなどということもあるのです。

ストーリーも、ある日、爆弾の処理を終え、退避しようとした瞬間に突如爆弾が炸裂し、処理班のひとりが殉職するシーンから物語は展開します。
殉職者(=リーダーだった。)の後継に配属されてきたのが、ウィリアム・ジェームズ二等兵。但し、このジェームズ、少々チームワークの点で問題あり。
危険な任務である「爆弾処理作業」なのに、基本的な安全対策も行わず、まるで死に対する恐れが全くないように振舞う。その為、補佐に就くサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は、いつ死ぬかもしれない緊張感に直面させられる。ジェームズが超一級の爆弾処理の腕をもっていることは認めても、ふたりは、徐々にジェームズへの不安や不満を募らせる。

そんななかで、作品では、6つの「爆弾処理要請現場」が登場します。
ストーリーが進展する毎に、段々と、「爆弾処理作業」の難易度があがっていきます。
この辺り、下手なホラー映画やサスペンス映画よりも、よっぽどハラハラ・ドキドキするのです。
爆弾処理が無事終了するごとに、館内から「はぁ~」っと、安堵の溜息が聞こえてきそうな雰囲気になります。
鑑賞中は、手に汗握る感じです。

いゃぁ~、オーディエンスも、ジェームズ班長の傍で、爆弾処理作業に同行しているような錯覚に陥りますよ!それぐらい、テンションの高め方、(爆弾処理が終わった後の)クールダウンの手法が巧みです。
残念ながら、「6場面」とも成功とは行かず、
「5の現場」では、技術兵・エルドリッジが敵の銃弾に足を撃たれ、
「6の現場」では、爆弾処理に失敗します。

主人公のジェームズは、虚勢を張るただの命知らずではない。
ある意味、勇敢な爆弾処理のプロフェッショナルなのです。
難易度の高い「処理現場」でも、冷静に、そして正確に爆弾処理を淡々とこなします。
では高度なチームワークが要求される爆弾処理作業を遂行するのに、なぜ、彼はチームワークに頼らず、作業のルールを無視し、仲間を不安に陥れて平気であるのか・・・。

彼は、自分が処理した爆弾のパーツを必ずひとつ現場から持ち出し、自らのコレクションとしている。
常に厳しい緊張感に身を於かねばならず、この緊張感から解放されるために、
時には奇行を、時には異常なまでにテンションを高め、そして多量の酒を煽ってなんとか精神面の安定を保つ。
ところが、段々この緊張感が快感になる。

作業現場で活動している時は、まるでドラッグを吸っている時の様な状態になってくるのである。
だから、ルールなんて関係なくなってくる。だって、ドラッグをやるときにルールなんてありますか?
この辺りの主人公・ジェームズの真相心理の描き方が、物凄く美味いのです!
戦場の持つ不思議な魔力、
しかし、人類は、この「魔力」を否定しなければならない。
しかし、誰が「魔力」を破壊するのか?
「魔力破壊」に挑めば、その者は必ず、「戦争の魔力」にはまり込むという矛盾。

なかなか着想の面白い作品です。
そして、作品がスタートすると、オーディエンスはスクリーンから目を離せなくなる“危険な作品”でもあります。

ご興味があったら、劇場へ…。

本日の『酒の肴」はここまでです。
如何でしたか。
ご堪能頂けましたら幸いです。

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