2010年4月1日木曜日

読んでから観るのが面白い! “ネタバレ注意”

これは、一昨年に仕入れた素材と、昨今仕入れた素材を一緒に用いて創作した「酒の肴」です。
ビールを飲みながら、ゆっくりとご堪能下さい。

小生が中学生のとき、「金田一耕介シリーズ」や「人間の証明」などが映画化され、
『読んでから観るか、観てから読むか』という角川のCMが反響を呼んでいました。
まず、以下の話を読んで下さい。(友人に宛てた「メールの抜粋」なので、言い回しに失礼があります。どうぞ、温厚に受け止めてください。)

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話は変わるが、
先の土曜日に、伊坂幸太郎さんの『ゴールデンスランバー』を読み、その後、伊坂作品 『オーデュボンの祈り』・『重力ピエロ』と立て続けに読破した。
おかげで、昼と夜が逆転した生活リズムになっている。

ショットバーの若いバーテンさんに伊坂作品を紹介され、これまでも『ラッシュライフ』・『グラスポッパー』・『チルドレン』・『死神の精度』・『陽気なギャングが地球を回す』・『アヒルと鴨のコインロッカー』などを読んだ。
(補足:その後、伊坂作品は、2作品を除いて全て読破しました。)
伊坂さんはミステリー作家とされるが、
作品は非常にシュール・前衛的であり、
ストーリーは時制を縦横無尽に飛び廻る為、プロットは緻密に構成され、
台詞は印象的で、心に残るフレーズが多々登場する。
幾つかの作品は映画化もされた。
数年前から直木賞候補の常連であり、いつ受賞してもおかしくはない。
(唯、昨年はノミネートを辞退されたが…。)
東北出身(東北大卒)で、作品の舞台が仙台になることが多い。

さて、上記の『ゴールデンスランバー』であるが、
この作品、本年度、数々の賞を受賞しておるそうな。
新聞広告を見、偶々立ち寄った古本屋でこの作品を見つけたので買い求めた。

『ゴールデンスランバー』、直訳すれば、『黄金のまどろみ』とでもなろうか。
貴公もご存知の、ビートルズの『アビーロード』に同じ題名の曲が収録されている。
作品中でも、この曲がポールによって創られた背景などが紹介され、主人公の心理描写に影響を持つ。
ストーリーは、次の通りである。

仙台で、時の総理大臣が暗殺され、元宅配便業者に勤めていた若者(青柳)が、この事件の犯人に仕立て上げられる。
もちろん、この若者は事件には一切関わっていない。つまり、『偽の目撃証言』や『偽造された防犯ビデオ映像』などによって、ひとりの若者が犯人にでっち上げられるのである。
若者は警察の手から逃げる、逃げる。そして、また逃げる。

この逃亡の2日間+半日を描いた作品である。
結果は、様々な人々の助けにより、最期には若者は整形手術をほどこし、逃亡成功となる。
その後、事件は人々から忘れられるのだが、誰も若者を犯人だとおもうにものは居らず、真の犯人は、当時の副総理とか、政界の黒幕とか、政敵とか様々な憶測が飛び交う。
また、この事件逮捕に関わった警察官・事件の目撃者・事件捜査協力者などは、その後、次々と事故死に会う。
ただ、あくまで作品の中心は、『逃亡する2日間+半日』の様相である。

若者の逃亡を助けるのは、音信不通であったかつての友人や、殺人逃亡犯や、かつての職場の先輩や、偶然出会った泥棒のおっちゃんなどなどである。
このあたりのストーリー構成は、本当に緻密である。また、伏線も巧みに描かれている。
また、若者が犯人に仕立てられる過程は、事件より数年前より開始されるのだが、この辺りのプロットの組み方も憎い!
悶々としていた小生だが、この作品は一気に読破した。

貴公もお気づきだと思うが、この作品は、『ケネディ大統領暗殺事件』を下敷きにしている。
結局、『現在、オズワルドを犯人と思う人は、あまりいないのではないか』、ということである。
さらに、ビートルズがバラバラになった時、どうしてポールが『子守唄』のような『ゴールデンスランバー』という曲を創り、最期のアルバム(収録が最期と言う意味)にこの曲を収録したのか。
ポールは何をこの曲に込めたのか、ということも、この作品の主題と関連してくる。

若きクリエーター・伊坂幸太郎、なかなかやるものである。
久々に堪能した。

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上記は、小生が友人に、一昨年に送ったメールです。
さて、この伊坂幸太郎著・『ゴールデンスランバー』(黄金のまどろみ)が、現在、映画になって劇場公開されています。
小生もさっそく、映画版 『ゴールデンスランバー』を鑑賞しました。

ここから、本日の「酒の肴」は、この映画版『ゴールデンスランバー』について語ることになります。
さて、映画版は、基本的には小説版に忠実にストーリー構成がなされています。
映画版では、総理大臣暗殺後の政界の様相には殆ど触れていない点が、小説版と異なるところです。
映画版は、あくまでも、犯人に仕立て上げられた元宅配便業者の若者(青柳)が逃走をする様を中心に展開されています。
逃走が、(警察やマスコミとの)闘争になっていくのですが、
若者を助けるのが、音信不通であった大学時代の2名の親友と、殺人逃亡犯や、宅配便勤務時の職場の先輩や、数ヶ月前に助けたアイドル歌手や、泥棒のおっちゃんです。
若者は、彼らに助けられ、励まされて、逃走を、(自分を暗殺犯に仕立てようとする警察との)闘争に昇華し、さらに逃走へ戻るということになる。

映画版では、
逃走中に、嘗ての大学時代の思い出がコラージュされ、
闘争中に、逃走している若者を応援する人々の“暖かい思い”が、オーディエンスの胸の中に入り込み、
最後は、オーディエンスも“若者”(彼の名は青柳)と一緒に、意識の中で逃走を開始してしまうのであります。
映画版は、音楽・映像によって、オーディエンスも主人公の青柳君に、容易に同化されてしまうのです。

まぁ~、「読んでから観る」と、
①あの場面は、どのような映像になるのだろうか。
②あの主人公は、一体、どんな声を発するのであろうか。
③(地下水道を巧みに利用して逃走するのですが)、あの地下水道はどのように映像化されるのか。
④総理大臣爆破シーンは、どのような映像になるのか。
⑤ビートルズの「ゴールデンスランバー」は、映画の中でどのように使われるのか。
等等、視聴前からワクワクしてしまいますなぁ。

伊坂さんは、時々、登場人物に哲学を語らせるが、映画ではこの点どうするのか?
なども気になっていましたなぁ。
単に、「大脱走」のスリルとサスペンスに留まらず、
何故、本当は仲が悪くなっていた、ビートルズの4人が、アビーロード、そして『ゴールデンスランバー』を創り上げたのか…、
何故、花火はパソコンで打ち上げるのか・・・、
何故、オズワルドはケネディ暗殺の犯人に仕立て上げられたのか…、
など興味深いテーマも一緒に語られます。

小生、非常に堪能させて頂きました。
まぁ~、ブックオフで原作¥800、映画はチケット屋のディスカウントで¥1200、合計¥2000の投資でした。
それにしては、楽しめたなぁ~。

まぁ~、「読んでから観る」のも、面白いですよ。
おっと、少々、長くなってしまいました。
本日の「酒の肴」は、ここまでです。
ご堪能頂けましたか。では、また。

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